エネルギー事業をはじめ、建材やフランチャイズ事業などあらゆる分野で地域産業を支える株式会社三ッ輪商会(以下、三ッ輪商会)。同社では、LPガス販売における顧客向け請求書(はがき・封書・検針票)の発行・郵送などの業務負荷や郵便料金の値上がりによるコスト増加に対応するため、LINEを活用したWeb明細サービス「Gascope(ガスコープ)」を導入。インターネット上で確認できる「Web請求書」へ移行することで工数削減を実現するとともに、LINEを使った販促活動など顧客とのオンライン接点を作り、売上拡大に向けた取り組みを開始しました。
「これまでは請求書を早く郵送するために、印刷や封入、切手の貼り付け作業などをタイトなスケジュールでこなしていたので、そうした手間がなくなり非常に楽になりました」
株式会社三ッ輪商会 エネルギー事業本部 北見LPガス課 係長 深堀 美佳 氏
北海道釧路市に本社を置き、ガソリンスタンド経営や灯油・LPガスの販売など地域のエネルギーインフラを担う株式会社三ッ輪商会。創業78周年を迎える同社は、そのほかにも建築用資材の販売やスーパーマーケットのフランチャイズ事業、アウトドアショップ・キャンプ場運営など多種多様な事業を行う総合商社として、地域の暮らしに役立つサービスを提供しています。
「当社は、古くは石炭などの販売を行っていた時代からエネルギー事業に取り組んでいますが、近年高まっているエネルギー不安やコロナ禍を経験し、リスク分散の観点からも多岐にわたる事業へ積極的な展開を行っています。さまざまな事業が立ち上がる中で、管理本部を中心とした業務のデジタル化も推進しており、業務効率化とコスト削減を図っています」(中道氏)
デジタル化という面では、同社の主力事業であるLPガス販売において、LPWA※1技術の登場によりスマートメーターなどIoT機器の普及が進んでいます。従来、需要家を訪問して検針を行っていたスタイルから遠隔での対応が可能となり、検針員の省人化に大きく貢献していると原氏は語ります。
※1 LPWA(Low Power Wide Area-network):低消費電力で広域・長距離通信が可能な無線通信技術で、IoTにおける基盤技術として幅広く活用されている。LPガス分野においては、遠隔からの自動検針やガス残量把握に役立てられている。
「検針員が不足なく雇える状況であれば特に問題はないですが、業界全体で採用が厳しい状況です。しかしLPWAを採用することで、検針員を派遣して行っていたガスメーターの検針やガス漏れの検知といった保安業務が自動化され、検針員の省人化が可能になります」(原氏)
より確実に省人化を実現させるために、次のような要素もあったと中道氏は続けます。
「LPWAを取り入れた背景として液石法※2への対応があります。LPガスの販売エリアに応じて要件を満たすと『ゴールド保安認定事業者』として認められ、保安距離や点検頻度の緩和といった特例を受けることができます。お客さまが少ないエリアでも営業所を設置しなくてはならない場合もあるので、認定を受けることで省人化にも貢献します。LPWAは認定要件のひとつになっているため、国の補助金交付を受けながら徐々に切り替えを実施しているところです」(中道氏)
※2 液石法(液化石油ガスの保安の確保及び取引の適正化に関する法律):液化石油ガスの販売や器具の製造・販売を規制し、災害を防止するとともに取引の適正化を図る法律
このように、LPWAの導入により省人化・業務の効率化が進む一方で、検針員が現場に行かなくなることによる新たな課題が顕在化しました。
「従来、検針と同時にその場で紙の明細を発行し、お客さまのポストに直接投函を行っていました。しかし、LPWA導入後は検針員が現場に行かなくなるため、明細がお客さまの手元に残らず別で請求書の発行・封入・郵送といった新たな業務が生まれました。せっかくLPWAで効率化できたのに、今度は請求業務が非効率な形になってしまいました」(原氏)
追い打ちをかけるように郵便料金の値上げが2024年10月から行われ、郵送コストの負担も増加。従来から比べるとはがきは約35%、封書に関しては約17~31%値上がりしました。
「毎月7,000件近く請求書を発送していたので、郵便料金の値上げはかなりの痛手になります。元々、A4の紙を三つ折りにして封書で送付していたものを郵便料金を抑えるために圧着はがきに切り替えるなど工夫はしていたものの、その中で今回の郵便料金の値上げがあり、状況はさらに厳しくなりました。
また頻度は高くないですが、お客さまが請求書を紛失されたり、早めに届けてほしいといった個別対応を行う場面もあり、請求書を紙で運用していくことにさまざまな面で負荷を感じていました」(深堀氏)
こうした背景から、三ッ輪商会では紙明細からWeb明細での運用を検討していくことになりました。
「基幹システムを入れ替える話も進行しており、当初は顧客台帳や請求機能もパッケージ化されたシステムを検討していました。結局、パッケージ化されたものではなく既存システムを生かして運用していく方針となり、Web請求の機能についてはそれ単体のサービスを探すことにしました。ちょうどそのときに取引先からソフトバンクさんの『Gascope』をご紹介いただき、具体的に検討を進めていくことになりました」(中道氏)
「Gascope」の提案を受けて、同社が感じたメリットについて、原氏は次のように語ります。
「当社の基幹システムと連携できることが大前提でした。『Gascope』ではそれが実現できることと、請求データをCSVで『Gascope』にアップロードするだけで請求明細が作成できるというシンプルな機能が使いやすく感じました。
また、お客さまはいつでもLINEで請求明細を確認できるので利便性も上がりますし、私たちからはLINE公式アカウント※3を通じて顧客属性に合わせた案内を行うことができます。例えば、『戸建ての人』や『アパート・マンションの人』といった具合にターゲットに分けて、さまざまな通知ができる点に魅力を感じました。
費用感については、Web明細への登録率をもとに1アカウント当たりの費用を出していただくなどコストシミュレーションを行っていただいたこともあり、紙の請求書を有料化することも踏まえた費用対効果を分かりやすく提示いただけました」(原氏)
※3 LINE公式アカウント:企業や店舗がユーザーとのやりとりを行う法人向けアカウント。1対Nのメッセージ送信ができたり、顧客属性を分けたコミュニケーションなども可能。
「Gascope」と基幹システムとの連携可否は、事前にソフトバンクと基幹システムベンダーとのQA対応を行うことで判断が可能になります。「Gascope」導入に合わせて基幹システムの改修が必要となった場合、その費用も契約前に把握することが可能です。
また別のメリットとして、三ッ輪商会では営業所ごとに請求管理を行っていることから、「Gascope」で拠点別に請求や顧客管理ができる点も良かったと言います。
「当社では、LPガスを取り扱う営業所が全部で7つあります。その営業所ごとに請求書の対応を行っている関係で、本社で一括管理はせずに拠点別に各担当者が請求システムを使いたいという希望がありました。『Gascope』では拠点ごとに管理が可能な機能があるため、そこもメリットに感じた一つです」(深堀氏)
これらの評価ポイントをもとに、三ッ輪商会は2024年2月に「Gascope」の導入を決定しました。
「Gascope」と基幹システムの連携を含めた切り替え準備が始まりました。「Gascope」のインターフェース仕様書に沿った基幹システム改修は滞りなく進み、テスト環境を通じて使用感をしっかり確認できたと深堀氏は語ります。
Gascopeの管理画面
「システム改修が終わり、テスト環境で『Gascope』と基幹システムがスムーズに連携できていることが確認できました。その後、『Gascope』へアップロードする顧客データ作成などデータ整理に少し手間取る部分はありましたが、問題なく進めることができました。試してみて気になる点があったときには、適宜ソフトバンクさんへフィードバックさせていただいて、スピーディーに対応いただけました」(深堀氏)
試用期間を経て、2024年7月からLPガス部門での本運用を開始。各営業所での請求業務が「Gascope」に切り替わりました。顧客向けの案内は、デジタルに不慣れな方へのケアも含めて入念に行ったと言います。
「まず周知期間は長めに設定しました。年配のお客さまもいらっしゃるので、2024年9月から計3回ほど通知文書でご案内し、周知方法もホームページでのお知らせやチラシの配布などさまざまな手段でオンライン登録を促しました。徐々に登録者が増えていって、2025年1月から本格的にWeb請求・明細へ変更して紙の請求書は有料化させていただきました。
いざ紙で請求書が来なくなると問い合わせの件数も増えてくるので、電話でご説明したり、電話では難しいお客さまには営業が訪問して登録のサポートを行っています」(原氏)
Web明細のオンライン登録をご案内する利用ガイドを発行
「Gascope」によって、従来多くの時間と手間をかけていた請求書の印刷や封入といった作業が不要となり、大幅な業務短縮が実現しました。深堀氏はその効果について次のように話します。
「請求データが確定したら『Gascope』にアップロードするだけなので、時間に追われず作業できるようになりました。これまでは早く郵送するために印刷や封入、切手の貼り付け作業などをタイトなスケジュールでこなしていたので、そうした手間がなくなり非常に楽になりました。郵便法の改正で郵便物が到着するまでの日数もかかっていたので『まだ届かないのか』といった問い合わせも『Gascope』導入後は減ったように感じています」(深堀氏)
「Gascope」導入に合わせて立ち上げたLPガス部門のLINE公式アカウントもすでに5,300人以上※4の友だち登録があり、今回の移行対象者である約14,000人の約4割に到達しました。
「登録数も順調に推移しているので、今後も登録促進の取り組みを継続していきます。LINEを使ったお客さまとの接点作りは、まだ手探りな部分も多いですが、施策の提案に関しては定期的にサポート定例会を開いてもらい伴走いただいてますので、心強く感じています」(原氏)
※4 2025年3月時点
Web請求を開始して間もないということもあり、まずはWeb登録の促進、顧客からの問い合わせ対応をひと段落させることに努め、今後の利用拡大についても検討していきたいと話します。
「今回LPガスを中心にスタートした『Gascope』ですが、これを灯油販売を行っている石油部門にもぜひ広げていきたいと考えています。LPWAもまだ道半ばですので、一番お客さまの多い札幌エリアについても導入を進めていき、併せて『Gascope』で業務負荷の軽減ができればと思います」(中道氏)
「『Gascope』の導入は、紙の削減といった観点でカーボンニュートラルに寄与する社会的貢献度の高い取り組みになりました。本取り組みをステークホルダーの皆さまにもしっかりと伝えていきたいと思います」
株式会社三ッ輪商会 常務取締役
エネルギー事業本部長 兼 帯広支店長 中道 一孝 氏
LPガス部門を皮切りに、他部門にも積極的なデジタル化を推進する三ッ輪商会。同社の取り組みはさらなる業務効率化と顧客サービスの向上を目指して、次なるステージへと進んでいきます。
お話を伺った方
株式会社三ッ輪商会 常務取締役
エネルギー事業本部長 兼 帯広支店長
中道 一孝 氏
株式会社三ッ輪商会 エネルギー事業本部 LPガス道東販売部、
エネルギー事業本部 LPガス道央販売部 担当部長
原 義博 氏
株式会社三ッ輪商会 エネルギー事業本部 LPガス道東販売部 北見LPガス課 係長
深堀 美佳 氏
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